この街を面白くする100人

障がいのある子どもたちの輝く可能性を知ってもらいたい 。内海 智子さん

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内海 智子 プロフィール

NPO法人ドリームエナジープロジェクト理事長
藤沢市在住
早稲田大学教育学部卒。国語科教師、フリーライターを経て、NPO法人ドリームエナジープロジェクト理事長となる。著書に、ダウン症の長男と年子の弟の育児記「ぼくはダウン症の俳優になりたい」(雲母書房)ミュージカルグループ「ホットジェネレーション」神奈川校を立ち上げる。また、知的障がい児の芸能プロダクションの立ち上げ、運営に3年間関わる。
WEBサイト:http://www.dre-pro.net/

剣道に打ち込んだ青春時代

京葛飾区の生まれで、下町で育ちました。小学1年生の頃、身体が弱く、いじめられていたこともあって、半年学校に行けない時期がありました。その後3年生のときに引っ越しをし、中学に上がってからは兄がやっていた剣道を始め、夢中になったんです。高校、大学でも剣道を続けたのですが、特に早稲田大学の体育会剣道部時代、周りは全国から集まった猛者ばかり、100名いる部員のなかで女子部員はたったの5名。いろんな意味で鍛えられました。大学卒業後は、2年間国語の教師として私立高校に勤め、その後学校対象の掲示用写真ニュースをつくる新聞社に5年間勤めました。

長男・隼吾さんの誕生

29歳で結婚し、藤沢へ引っ越してきました。結婚後はフリーライターとして活動し、34歳の時に長男の隼吾(じゅんご)が生まれました。隼吾との出会いが私の運命を大きく変えたんです。医者から、隼吾がダウン症だと言われたときには、大きなショックを受けました。「障がい児」という言葉は、この先ずっと健常な子や親子が得られるチャンスを逃してしまうんじゃないか、成長したとしても限界があるだろう、などとマイナスな気持ちばかりを生み出しました。さらに隼吾は小さいとき、アトピーやぜんそくなどで、毎日のように医者に通う生活が続き、不安でいっぱいでした。

そんななか隼吾が2歳の時、『八日目』(ジャコ・ヴァン・ドルマル監督)という映画のダウン症の俳優が、カンヌで最優秀男優賞を受賞するというニュースに出会い、カウンターパンチを受けました。ダウン症の人にそんな可能性があったとは! 私自身が我が子を信じてやれていなかったことが許せなかったです。

それからはダウン症や知的障がいのある子たちに可能性があることを知ってもらいたいと活動し始めました。雑誌に障がいへの理解を促す記事を書いたり、今は閉館してしまいましたが「藤沢オデヲン」に掛けあって、『八日目』を上映してもらったり。

隼吾は歌とダンスが好きで、障がいを持つ子と健常の子が一緒の舞台に立てる「ホットジェネレーション」というミュージカルスクールに通い始めました。一生懸命練習して覚えたことを、舞台の上で発表してお客さんから拍手をもらうと、本当に嬉しそうでした。そうした達成感は自信につながり、今まで出来なかったことができるようになったりするんですね。本当に楽しそうに演じている息子の姿をみて、『ぼくはダウン症の俳優になりたい』のタイトルで、子育て記を執筆し出版しました。

知的障がいのある子たちがもっと輝ける場をつくりたいとも考えるようになって、知り合いと知的障がい児の芸能プロダクションを立ち上げ、3年間運営にも関わりました。

ドリプロスクールの開校

最終的にはその体験をもとに「やりたいことは自分でゼロからつくるしかない」という思いから、ドリームエナジープロジェクトを立ち上げ、2013年の7月から「ドリプロスクール」を開校しました。ドリプロスクールは、ダウン症や自閉症、発達障がいなど知的にハンディのある子たちに、学びと体験の場を提供するウィークエンドスクールです。スクールを行っているのは横浜の根岸。現在、ダンス、歌、美術、書道、英会話、写真、体あそび、料理、表現、社会スキル、コミュニケーションの11の講座があり、コミュニケーションのレッスンではお笑いもやるんですよ。今探せばダンスや書道を単独に習うところはあるんですが、実際我が子は何が好きで何に向いてるのか、なかなかわからないですよね。だから、いろいろな科目を開講して好きなものを選んで受講してもらうようにしています。興味のないことには見向きもしませんから(笑)それを無理にさせるのではなく、興味を持つのは何なのかを探して、それを伸ばしてあげたいんです。特に彼らの絵や書は面白いですよ。型にはまらず迷うことなく心が動くまま感性で作品を作っています。自由に表現できることと、それを表現できる場があることは子どもたちにとってとても刺激になることなんですね。昨年の4月には、藤沢市の長後にある『ギャラリー669』で美術・書道・写真の作品展を開催しました。

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スクール以外の活動としては、「インクルージョンライブ」を行っていて、障がい者の音楽活動を支援するグループと協力し、ライブハウスで障がいのある人もない人も一緒に楽しめるライブを開催しています。この活動には、障がいのある子とその家族がライブを楽しむこと、プロのアーティストと障がい者が共演すること、障がいに関係がない人にも楽しんでもらうという3つの目的があります。

また、『ぷれジョブ藤沢』という活動の支援も行っています。「ぷれジョブ 」は、障がいのある子が週に1回1時間、ジョブサポーターという見守り役の人とともに地元のお店や事業所で半年間お仕事体験をするというもの。街の一員であるということを地域の人に認識してもらうことを目指しています。元宮城県知事の浅野史郎さんがSFCの教授だった3年前に立ち上げ、私がお手伝いをする形で始まりました。協力事業所は古久家さんをはじめとする飲食店や会社や老人ケアセンターなど、のべ16か所にのぼります。仕事は、シール貼りやシュレッダーなどの事務作業や、掃除、商品の箱詰め、お客さんへの「いらっしゃいませ。ありがとうございました」の声掛け、など様々です。事業所の方はみなさん、最初障がいのある子に何をやってもらうか悩まれるそうなのですが、「案外すぐみつかった」「社内の仕事の洗い出しができてよかった」と言ってもらえます。障がいのある子にとっては貴重な社会体験になり、ジョブサポーターにも事業所にもプラスになることなんですね。

NPO法人の認定を受けて

ドリームエナジープロジェクトは今年3月NPO法人になりました。今後の目標としては、ドリプロスクール、インクルージョンライブ、障がいのある子が輝く他の事業を発展させることです。そのために、今はボランティアに近い状態ですが、長く続けるためにはどうしても収益性のある活動にしていかなければなりません。この街から障がい者が生き生きと活躍できる場を増やしていくことが私の使命だと思っています。

 

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