編集長のコラム 連載

“世界の終わり”の向こうがわ|once upon a time.

世界が終わるそうだ。口蹄疫が猛威を奮い、日本の畜産業、数百年の成果の結晶である種牛を殺処分。メキシコ湾では海底から原油が毎日15000リットルというペースで漏れ、これからハリケーンがそれを巻き上げて原油の雨を降らせると、アメリカ及び南米、カナダの農業は壊滅することになる。金融経済が本格的に転換機を迎え、これまでの仕組みや価値が大きく変わることになりそうだ。京都大学霊長類研究所のニホンザルが体中から血を流す謎の病気で相次いで死に、人間に伝染するタイプに変化する可能性のある原因ウイルスはいまだ特定できていない。2012年を待たずして、世界は音を立てて軋(きし)み始めた。「世界が終わる」という言葉はまるで使い古された冗談みたいに人の口から出ては消え、でも、その不気味な存在感はいつまも消えることはない。世界は終わるのか? そう問われれば答えは「イエス」だ。ただ、いつどのように終わるのか。それはどこのシンクタンクにも、どのアナリストにも明確な答えはない。ただ一つ言えることは、「世界」が終わったところで、俺たち自身は生き続けるってことだ。かつて、一つの世界が終わったことがあった。その世界は260年という永きに渡って栄華を極め、信心深く、ユニークな髪型をした人々が色鮮やかな衣服を着て、清潔な街に住み、芝居や芸術などに関心を寄せ、豊富な海産物や農産物を食し、豊かに日々を暮らしていた。260年続いた世界が終わるなんて、当時の誰が考えただろう? しかし、ひと握りの男たちの奔走により、その一つの世界は終わり、政治・法律・王制・身分制度・地方行政・金融・流通・産業・経済・教育・外交・宗教など、これまで常識だった価値観がわずか十数年で様変わりをした。後の世の人々はその古い世界を「江戸時代」。新しい世界を「明治時代」と呼んだ。そうしてまた、新しい世界がやってくる。

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